ショッピングセンターや商業モールは、ただ商品を並べる場ではなく、人・時間・体験が交差する「街の交差点」のような存在です。
来館者の数・属性・行動がわかれば、施設運営者やテナントは、どのように設備を配置すれば良いか、どの集客プロモーションが効果的か、サービスをどう改善すべきかを判断できます。
このような分析を可能にするのが、来館者調査を含むマーケティングリサーチ・市場調査です。
本ページでは、「来館者調査」の目的と意義から、どのような調査手法があるか、また調査結果をどう読み取って施設の価値向上につなげるか、3つの段落で整理して解説します。
商業施設の運営者・企画担当者が、来館者動向を捉え、利用者満足度を上げ、競争力を維持・強化するためのガイドとしてお役立てください。
来館者調査の基礎知識
来館者調査とは何か|その目的
ショッピングセンターやショッピングモールの運営において、「来館者調査」は欠かせない基礎的な取り組みです。
来館者調査とは、施設に「誰が」「どのくらい」訪れているのかを明らかにする調査であり、単なる入館者数のカウントにとどまりません。
来館者の属性(年齢・性別・居住地など)や来館目的、利用頻度、滞在時間といったデータを把握することで、施設が持つ強みや課題を浮き彫りにできます。
たとえば、家族連れの比率が高ければキッズ向けイベントや飲食店舗の拡充が有効であり、若年層が多ければSNSを活用したプロモーションが効果的です。
来館者数の推移を時系列で追えば、集客施策やキャンペーンの効果を検証することも可能です。
このように、来館者調査は施設運営の方向性を定めるための羅針盤となり、テナント構成やマーケティング施策の根拠を提供する重要な役割を担っています。
来館者調査で得られる主なデータ項目
来館者調査では、単なる人数の把握にとどまらず、施設運営に直結する多様なデータを得ることができます。
主な項目としては、まず「属性データ」が挙げられます。
これは年齢層や性別、職業、居住地などで、来館者像を明確に描くための基礎情報です。
次に「行動データ」があり、来館目的、交通手段、来館頻度、滞在時間、同行者の有無といった項目が含まれます。
これらのデータから、来館者がどのような動機で施設を訪れ、どの程度の時間を過ごしているかを把握できます。
さらに「利用データ」として、施設内での店舗利用状況や購買品目、支出金額、イベント参加の有無なども重要です。
これらを組み合わせることで、集客施策やテナントミックスの適正化に役立つ実践的なインサイトが得られます。
来館者調査は単なる統計調査ではなく、商業施設の持続的成長を支える戦略的な情報資源です。
商業施設マーケット調査との関係
来館者調査は、商業施設マーケット調査の重要な一部として位置づけられます。
マーケット調査全体では、商圏の人口動態、競合施設の状況、消費者の購買行動やニーズといった広範なデータを収集しますが、来館者調査は「実際に施設を訪れる顧客」の具体像を把握する点で特に重要です。
来館者の属性や行動パターン、滞在時間や回遊動線、利用店舗・サービスなどのデータを得ることで、商圏分析の精度を高め、施設運営やテナント戦略に直結するインサイトが得られます。
さらに、競合施設との比較やシーズンごとの変化を分析することで、施設独自の強みや改善点を明確化できます。
このように、来館者調査はマーケット調査の結果を現場レベルに落とし込み、実務的な施策や事業計画を策定する上で、重要な意思決定をするために重要な役割を果たします。
調査手法と実践のステップ
主な調査手法|アンケート調査と来館者カウント調査
ショッピングセンターや商業施設の来館者調査では、主に「アンケート調査」と「来館者カウント調査」の二つの手法が用いられます。
アンケート調査は、来館者に直接質問票を配布したり、調査員がアンケート内容を聞き取る方法などで回答を収集する方法で、年齢・性別・居住地・来館目的・満足度など、属性や意識・行動の詳細データを取得できます。
来館者カウント調査は、入口や施設内の通路に調査員を配置したり、センサーやカメラで人数を自動的に計測する方法で、来館者数や時間帯別の来館動向、滞在時間や回遊経路など、行動量の把握に適しています。
両者を組み合わせることで、属性・意識データと実際の行動データを統合して分析でき、より精度の高い施設運営戦略や集客施策の検討が可能になります。
調査手法の選択や組み合わせ方によって、顧客自身が気づいていない、または無意識下の本音や動機をしっかりとつかむことができます。
調査設計のポイント
来館者調査を効果的に行うためには、事前の調査設計が重要です。
対象を明確にすることから始めます。
曜日や時間帯、季節など来館者の変動要因を考慮し、サンプルの偏りを防ぎます。
アンケート項目や観測指標を具体的かつ簡潔に設計することで、回答者の負担を軽減し、精度の高いデータを収集できます。
そして、サンプル数や調査期間も適切に設定します。
少なすぎると信頼性が低くなり、多すぎるとコストや運営負荷が増します。
調査員の配置や測定機器の設置場所も重要で、来館者の流れや滞留場所に応じて最適なポイントを選ぶことで、正確で実用的なデータが得られます。
これらの設計段階での工夫が、調査結果の信頼性と活用価値を高めることになります。
アウトプット・分析のイメージ
来館者調査で収集したデータは、単なる数値の羅列ではなく、施設運営や戦略に活かせる形に整理・分析することが重要です。
たとえば、来館者属性や来館目的のデータを集計し、年代・性別ごとの来館比率や滞在時間を可視化することで、ターゲット層の特性が明確になります。
施設内での回遊動線や滞留時間を分析すれば、導線改善やテナント配置の最適化に役立ちます。
曜日・時間帯別の来館傾向や購買行動のパターンをグラフやヒートマップで表現することで、プロモーションやイベント計画の効果的に設計することもできます。
分析結果をもとに、施設全体の集客戦略やサービス改善策を具体的に策定することができ、調査結果から実務に直結させることができます。
当社が報告資料の最後にまとめる提言は、クライアントさまから好評を得ています。
調査結果を施設運営に活かすために
施設設計とテナント配置の改善
来館者調査で得られたデータは、施設の物理的な設計やテナント配置の最適化に直結します。
例えば、回遊動線や滞留時間の分析から、通路が混雑しやすい箇所や、来館者が滞留するエリアを特定することができます。
これら結果から、案内サインや導線の見直し、休憩スペースの配置変更などを行うことで、来館者の快適性と回遊率を向上させることが可能です。
また、属性別の利用状況を分析すれば、特定のターゲット層に適したテナントやサービスの導入、既存テナントの配置変更も検討できます。
さらに、店舗間の相乗効果を考慮したテナントミックスの改善により、購買意欲の向上や施設全体の魅力強化につなげられます。
来館者データを活用した設計改善は、施設運営の効率化と顧客満足度向上に効果的な手段です。
集客・プロモーション戦略への応用
来館者調査で得られる属性別のデータは、施設の集客施策やプロモーション戦略に直接活用できます。
年齢層や性別、居住地、来館目的などの情報を分析することで、ターゲット層に応じた施策を設計できます。
たとえば、家族連れが多い時間帯にはキッズ向けイベントやワークショップを実施し、若年層が多い時間帯にはSNSやデジタル広告を活用したプロモーションを行う、といった具体策が考えられます。
また、曜日や時間帯ごとの来館者傾向を把握することで、平日や休日の集客バランスを整える施策も可能です。
こうした個人の経験や勘だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいて意思決定の戦略によって、効率的かつ効果的に来館者数を増やし、施設全体の売上や利用満足度を向上させることができます。
満足度向上と継続的改善
来館者調査は、単に来館者数や属性を把握するだけでなく、施設の満足度向上に直結する情報源としても活用できます。
来館者からの意見や評価を収集することで、施設環境の快適性、サービスの質、設備の使いやすさなど、改善すべきポイントを具体的に把握できます。
さらに、定期的に行うことで、施策の効果を確認し、問題点や新たなニーズに応じて改善を重ねることが可能です。
この継続的な改善プロセスによって、施設の魅力を維持・向上させ、来館者の満足度や再来館率を高めることができます。
データに基づくPDCAサイクルを回すことで、商業施設の競争力を長期的に維持することが可能となります。
まとめ
ショッピングセンターや商業施設における来館者調査は、単なる人数把握にとどまらず、施設運営やマーケティング施策の基盤となる重要な取り組みです。
来館者の属性や行動、来館目的、滞在時間、購買行動などを把握することで、テナント配置や施設設計、集客施策、サービス改善に直結する実践的な顧客自身が気づいていない、無意識下の本音や動機が得られます。
アンケート調査やカウント調査といった手法を組み合わせ、曜日や時間帯、季節などを考慮した調査設計を行うことで、より正確で有用なデータを収集できます。
また、調査結果はグラフなどで可視化し、来館者動向の分析や施設改善策に反映させることが重要です。
さらに、定期的な追跡調査や満足度調査を実施し、データに基づいた継続的改善を行うことで、施設の魅力向上や顧客満足度の向上、集客力の強化につなげられます。
来館者調査を効果的に活用することで、商業施設は競争力を高め、利用者にとってより魅力的な空間を提供できます。
自社施設の運営改善や集客施策の設計に関心がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
キャリア豊富な専門スタッフが、貴社のニーズに応じたマーケティングリサーチ・来館者調査の活用方法をご提案し、実務で役立つサポートをいたします。
サービス紹介
株式会社NMR流通総研は中小企業を支える大阪府新大阪駅の経営コンサルティング会社です。伴走型支援で現場に入り込み、マーケットコンサルや人事制度・社員教育の仕組み作り・研修を通じて高い成果を生み出します。
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この記事を書いた人
大阪府の中小企業向け伴走型支援経営コンサルティング・株式会社NMR流通総研代表取締役 中坊 崇嗣

経歴
大学卒業後、大手流通企業に入社。商品仕入・販売管理、店舗運営の実務キャリアを形成するとともに、売場管理者としての小売現場のマネジメントキャリアを有します。
株式会社NMR流通総研入社後、商業ディベロッパー会社に出向し、テナント運営管理の仕組みを構築後、経営コンサルティング業務をメインとして、マーケティング、組織活性化コンサルティングを通じて企業活性化支援を総合的に展開している。また、行動心理士として、組織力強化を得意にしています。
メッセージ
私たちが他のコンサルティング会社と違うところは、(頭で考えて)プロジェクトプランや改善プランを設計して、その後はお任せではなく、私たちも実行段階まで踏み込んで、(身体も動かして)クライアントと一緒に新規事業の立ち上げや経営改善、組織活性、人材育成を推進することです。クライアントの目指す目標や抱える問題に共感・共有して、一緒に悩み、考え、実行、検証を進めブラッシュアップを図ります。私たちは、クライアントのパートナーとして一緒に歩み、そして一緒に成長して、生産性の向上や経営改善など、クライアントが実現を目指す目標を必ず達成しています。
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