企業が持続的に成長するためには、現場でのムダやムラ、ムリなどの非効率を取り除き、組織全体で「仕事の見える化」を進めることが欠かせません。
近年、働き方改革や人材不足が進む中で、単なる省力化やシステム導入だけでは十分な効果を得られないケースが増えています。
重要なのは、現場の実態を把握し、属人化した業務を整理・可視化し、誰もが理解できる形に整えることです。
こうした取り組みを通じて初めて、真の「業務効率化」が実現されます。
本ページでは、業務効率化や業務の見える化を進めるうえでの基本的な考え方と実践のポイントを解説します。
私たちがコンサルティングの現場で支援してきた数多くの事例を通じて得られた知見をもとに、改善を成功させるための要点を整理しました。
具体的には、業務プロセスの整理と標準化、組織内での情報共有の仕組みづくり、改善を定着させるためのマネジメントなど、実務に直結する内容を紹介します。
「業務効率化」「業務の可視化」「仕事の見える化」というテーマは、多くの企業が直面する共通課題です。
本解説を参考に、自社の現状を客観的に見直し、改善の一歩を踏み出すきっかけとしていただければ幸いです。
業務効率化の出発点|現状把握と課題の整理
ムダの洗い出し
業務効率化の出発点は、現場に潜む「ムダ」を見つけ出し、さらに「属人化」を解消することです。
ムダとは、不要な作業や工程、付加価値を生まない作業工程などを指します。
例えば、同じデータを複数回入力する二重作業や承認フローが複雑すぎて時間がかかるケース、書類や情報を探すための過剰な手間などが典型な例です。
こうした小さな非効率も積み重なれば大きな時間・コストとなり、社員の負担やモチベーション低下につながります。
業務を細かく分解し、「なくせる作業」「減らせる作業」「必要な作業」と分類することで、業務の効率化を進めるための改善に向けた優先順位を明確にすることができます。
一方で、業務効率化を阻むもう一つの壁が「属人化」です。
特定の担当者しか分からない手順やノウハウが蓄積すると、その人が不在の際に業務が停滞したり、引き継ぎに多大な時間・コストが発生します。
これは企業にとって大きなリスクであるとともに非効率となって効率化の妨げとなります。
属人化を解消するには、業務手順の明文化やマニュアル化、フロー図による可視化が有効です。
また、情報をチーム全体で共有できる仕組みを整えることで、誰もが同じ水準で仕事を進められる体制が生まれます。
ムダの洗い出しと属人化の解消は表裏一体の課題です。
両方を進めることで業務の流れを整理することができて、誰が担当しても同じ成果を出せる「再現性の高い組織(仕事の仕組み化)」が実現します。
これこそが本質的な業務効率化への第一歩といえます。
属人化の解消
業務効率化を妨げる大きな要因のひとつが「属人化」です。
属人化とは、特定の担当者しか業務内容を把握しておらず、その人がいないと業務が進まない状態を指します。
経験や勘に頼ったやり方、口頭での引き継ぎ、独自のノウハウに依存した進め方などが積み重なると、担当者以外は何もわからないという状況になります。
その結果、休暇や異動、退職といった場面で業務が停滞し、組織全体の活動にマイナスの影響を与えます。
属人化を解消するための第一歩は、業務手順を明文化し、誰もが理解できる形に整理することです。
フローチャートやチェックリストを用いて業務の流れを「見える化」することで、属人化した暗黙知を形式知に変えることができます。
また、マニュアル化だけでなく、ITツールや共有システムを活用して情報を一元管理する仕組みを整えることも効果的です。
これにより、業務の再現性が高まり、担当者が変わっても同じ品質で業務を遂行できる体制を築くことができます。
さらに重要なのは、単にルールをつくれば完了ではなく、組織全体で、決めたルールを共有する文化を育てることです。
担当者だけが抱え込むのではなく、チーム内でノウハウや改善点をオープンに話し合うことができる文化をつくることで、属人化のリスクは大幅に減らすことができます。
この文化は、そういった非効率を減らすだけではなく、予め防止することにつながります。
属人化を解消することは、業務効率化の実現にとどまらず、社員の働きやすさや組織の持続的な成長にも直結する重要な取り組みです。
業務フローの見える化
業務効率化を進めるうえで欠かせないのが「業務フローの見える化」です。
見える化とは、業務の流れや役割分担、情報の動きを整理し、誰が見ても理解できる形に表すことを指します。
多くの企業では、仕事が人や部署ごとに大きな流れの一部分を担当しているということが多いため、全体像を把握できていないケースが少なくありません。
その結果、同じ作業の重複や、手戻りの発生、責任の所在が不明確になるといった問題が起こります。
業務フローを図や表に落とし込み、手順を順序立てて整理することで、業務の全体像が一目で把握できるようになります。
例えば、受注から納品までの流れを工程ごとに分解し、誰がどの段階を担当しているかを明確にすることで、問題を発生させている原因となるボトルネックの箇所や、非効率を生じさせている部分を明確に発見できます。
また、可視化によって「本当に必要な作業かどうか」を問い直すきっかけにもなり、ムダの削減や手順の簡素化につながります。
さらに、業務フローを見える化することで、情報共有や教育にも大きな効果があります。
新入社員や異動者が業務を理解しやすくなり、引き継ぎ作業や、その時間を大幅に短縮できます。
加えて、部署間でのコミュニケーションも円滑になり、全社的な連携強化に寄与します。
つまり、業務フローの見える化は単なる効率化の手段にとどまるだけではなく組織全体の生産性と安定性を高める基盤となるのです。
仕事の見える化|情報共有と標準化の仕組み」
マニュアル化・ルール化
業務効率化を進めるうえで重要な基盤となるのが「マニュアル化・ルール化」です。
これは、業務手順や判断基準を明文化し、誰が担当しても同じ成果を出せるようにする取り組みです。
多くの現場では、経験や勘に頼った進め方や、担当者ごとのやり方の違いがある状態のままで、それが属人化やムダを生む原因になっています。
マニュアルやルールを整備することで、業務に再現性が生まれ、品質を安定させることにつながります。
マニュアル化は単なる「作業手順書の作成」ではなく、業務の目的や全体の流れを踏まえて整理することが大切です。
作業を細分化して分かりやすく記載することで、新人や異動者でもすぐに業務に取り組めるようになります。
また、ルール化によって判断基準が統一されれば、業務を進める中で行う判断も早くできるようになるため業務のスピードが上がり、担当者間での認識のズレやトラブルも減少します。
例えば、承認フローや報告書のフォーマットを共通の様式などに定めるだけでも、日常業務の効率は大きく向上します。
さらに、マニュアルやルールは「作って終わり」ではなく、定期的に見直し、改善することで現状とマッチさせておくことも重要です。
現場の変化に合わせて更新を継続することで、常に最適な業務を進める体制を維持することができます。
これによって、単なる効率化にとどまらず、組織全体で学習し、進化し続ける仕組みを構築することができます。
ITツールの活用
業務効率化や仕事の見える化を推進するうえで、ITツールの活用は欠かせない要素です。
従来は紙の書類や口頭の伝達に依存していた情報共有も、クラウドサービスや業務支援システムを導入することで大幅に改善できます。
例えば、ファイル共有システムを用いれば、メールで送受信してデータ等のやり取りに必要な時間が削減できたり、同じデータの重複保存といった非効率を解消できます。
また、タスク管理ツールやワークフローシステムを導入すれば、進捗状況や承認プロセスがリアルタイムで可視化され、業務の停滞を防ぐことも可能になります。
ITツールの利点は、単なる効率化にとどまりません。
データが一元管理されることで、担当者が変わっても同じ情報を共有でき、属人化の防止にもつながります。
さらに、分析機能などを活用すれば、作業時間や業務量の偏りを客観的に把握することができることから、改善に向けた取り組み課題についても優先順位をせっていしやすくなります。
こうした仕組みを整えることで、現場の判断がスピーディーになり、経営層もより正確な情報に基づいた意思決定を行えるようになります。
ただし、ITツールを導入する際に注意すべき点は「現場に合った設計」です。
システムが複雑すぎると、かえって現場に負担をかけて形骸化してしまいます。
ツールはあくまで「仕組みを支える道具」であり、目的は業務効率化と情報共有の促進です。
導入時には現場の意見を取り入れ、シンプルで使いやすい運用を心がけることが成功のカギとなります。
当社は、業務支援システムの設計、開発、導入支援を通じて、DX化に向けた取り組みも支援しています。
組織全体での共有
業務効率化を持続的に進めるには、改善の仕組みや情報を「組織全体で共有」することが不可欠です。
部署や担当者ごとに情報共有が限定されてしまうと、同じような課題を各部署で行うことになってしまい、非効率な状況が続いてしまいます。
また、改善活動が一部の部署にとどまれば、会社組織全体の最適化が図れず、各部署ごとの部分最適にとどまってしまい、業務のバランスが崩れてしまうこともあります。
組織全体での共有を進めるには、まず共通の基準やフォーマットを整えることが重要です。
報告書の形式や承認の手順、情報の保管場所などから統一すれば、異なる部署同士でも同じ視点で情報を扱ったり、業務を進めることができます。
さらに、定例会議や社内ポータルサイトを活用して、各部署での改善事例や成功体験を紹介すれば、ノウハウが各部署間に水平展開され、会社全体のレベルアップにつながります。
加えて、共有する文化を育てることも重要です。
「自分の部署だけできれば良い」という考え方ではなく、組織全体の成果を意識する風土を醸成することで、協力関係が強まり、効率化は一層進みます。
そのためには、経営層が情報共有の重要性を示し、率先して取り組む姿勢を見せることが効果的です。
組織全体で知識と改善の取り組みを共有することは、単なる効率化にとどまらず、持続的な成長を支える基盤となります。
改善を定着させる | 継続的なマネジメント
KPIと進捗管理
業務効率化の取り組みを一時的な施策で終わらせることなく継続的に取り組んでいくためには、成果を客観的に測定し、改善状況を継続的に確認する仕組みが必要です。
その中心となるのが「KPI(重要業績評価指標)」と進捗管理です。
業務改善は「やった気になる」ことが多く、現場の努力が本当に効果を生んでいるのかは、しっかりと確認をしなければ見えてきません。
そこで、数値や指標で成果を可視化することで、組織全体が改善の成果を検証して共有しやすくなります。
KPIは売上や利益といった最終成果だけでなく、業務プロセスに直結する中間指標を設定することがポイントです。
例えば、「書類探しにかかる時間の削減」「承認フローを短縮」「入力ミス件数を半減」といった指標を掲げることで現場レベルで達成感を持ちながら改善を進められます。
できれば、「書類探しにかかる時間が30%削減」など定量的に成果を確認できるようにすることか有効です。
また、進捗管理は単に数字を集計するのではなく、定期的にレビューを行い、問題があればすぐに修正するという柔軟性が重要です。
週次・月次の振り返り会議などにより、状況をリアルタイムに把握して、改善につなげる活動を継続させていきます。
KPIと進捗管理を適切に運用することで、業務効率化は単なる一過性のプロジェクトではなく、企業の組織文化として根付かせていきます。
現場の巻き込み
業務効率化を進めるうえで欠かせないのが「現場の巻き込み」です。
効率化の施策は、経営層や管理部門が方針を示すだけでは十分には機能しません。
実際に業務を担うのは現場の社員であり、日々の改善を継続するためには、彼らが主体的に関わり、納得感を持つことが不可欠です。
トップダウンだけで進めると「押し付けられた改革」と受け止められ、反発や形骸化につながってしまいます。
現場を巻き込むためには、まず「なぜ改善が必要なのか」を、社員と共に共有することが重要です。
効率化によって削減された時間を、新しい業務や価値創出に充てられることや、働きやすさの向上につながることを具体的に示せば、改善へのモチベーションが高まります。
また、現場から改善アイデアを募る仕組みを導入することで、実務に即した効果的な提案などの期待でき、効果的な取り組みにつながります。
さらに、改善の成果を「見える化」して共有することも効果的です。
小さな成功体験を積み重ね、社員が「自分たちの取り組みで職場が良くなった」と実感できれば、改善活動は、さらに活発化していきます。
現場の巻き込みは、効率化の定着にとどまらず、社員の主体性を引き出し、組織全体の成長力を高める原動力となります。
経営層のリーダーシップ
業務効率化を組織に定着させるには、経営層の明確なリーダーシップが不可欠です。
効率化は現場の工夫だけで進むものではなく、全社的な方向性や優先順位を示すことで本格的に機能するものです。
経営層が「業務効率化は一時的なコスト削減ではなく、企業の成長戦略である」ことを明確に発信して、改善にコミットする姿勢を見せることで、現場の理解と協力が得やすくなります。
リーダーシップの発揮には、まずビジョンを示すことが重要です。
「どのような組織を目指すのか」「効率化によって何を実現したいのか」などを具体的に発信することで、社員は改善の意義を自分ごととして捉えられるようにします。
また、経営層が現場に直接足を運び、改善の進捗を確認し、社員の声に耳を傾けることも有効です。
トップが関心を持ち続けている姿勢を示すことで、現場のモチベーションは大きく高まります。
さらに、成果を公正に評価し、成功事例を組織全体で共有することも、有効なリーダーシップの要素です。
効率化によって成果を上げた社員や部署を評価することで、改善活動は一過性ではなく、社内の文化として定着・浸透していきます。
経営層のリーダーシップは、効率化を単なる施策から「組織を成長させる持続的な仕組み」へと昇華させる原動力となるのです。
まとめ
業務効率化の第一歩は、現場の業務を正しく把握し、ムダや属人化していることを明確につかみ、その課題を可視化することにあります。
日常の業務フローを丁寧に点検し、どこに時間や労力が偏っているかを明らかにすることで、改善の糸口が見えてきます。
特に属人化は、担当者が不在になると業務が滞るリスクを抱えており、企業の成長を阻害する要因になってしまいます。
標準化やマニュアル整備、ITツールの活用を通じて、誰もが一定の水準で業務を遂行できる仕組みを整えることが重要です。
これによって、業務の安定性や生産性が向上するだけでなく、人材育成や組織力強化にもつながります。
業務効率化は単なるコスト削減ではなく、組織全体の活性化と持続的成長を実現する戦略的な取り組みです。
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この記事を書いた人
大阪府の中小企業向け伴走型支援経営コンサルティング・株式会社NMR流通総研代表取締役 中坊 崇嗣

経歴
大学卒業後、大手流通企業に入社。商品仕入・販売管理、店舗運営の実務キャリアを形成するとともに、売場管理者としての小売現場のマネジメントキャリアを有します。
株式会社NMR流通総研入社後、商業ディベロッパー会社に出向し、テナント運営管理の仕組みを構築後、経営コンサルティング業務をメインとして、マーケティング、組織活性化コンサルティングを通じて企業活性化支援を総合的に展開している。また、行動心理士として、組織力強化を得意にしています。
メッセージ
私たちが他のコンサルティング会社と違うところは、(頭で考えて)プロジェクトプランや改善プランを設計して、その後はお任せではなく、私たちも実行段階まで踏み込んで、(身体も動かして)クライアントと一緒に新規事業の立ち上げや経営改善、組織活性、人材育成を推進することです。クライアントの目指す目標や抱える問題に共感・共有して、一緒に悩み、考え、実行、検証を進めブラッシュアップを図ります。私たちは、クライアントのパートナーとして一緒に歩み、そして一緒に成長して、生産性の向上や経営改善など、クライアントが実現を目指す目標を必ず達成しています。
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